◆ケース1 民主単独過半数
◇3年間の「安定」確保
「参院選でしっかり勝ち名乗りをあげることが、鳩山由紀夫前首相と小沢一郎前幹事長の辞任に報いることになり、安定した政権を実現することになる」
菅首相は16日、国会内で開かれた民主党の参院議員総会に出席し、参院選後の本格政権実現を目指す姿勢を強調した。衆院で300議席超の圧倒的多数を有する民主党だが、参院(定数242)の現有議席は116議席で、過半数に及ばない。非改選議席は62。今回、60議席を獲得すれば単独過半数に達し、連立政党に左右されない安定政権への道筋がつくことになる。
支持率急落に苦しんだ鳩山内閣当時、民主党内では「40議席を切るかもしれない」との悲観論も広がっていた。その後を継いだ菅内閣の支持率は、毎日新聞が8、9日に実施した世論調査で66%へと「V字回復」を果たし、単独過半数の目標は現実味をもって語られるようになった。
一つの政党が衆参両院で過半数を握れば、89年参院選で惨敗する前の自民党以来21年ぶりとなる。次の参院選は3年後の13年夏で、衆院の任期満了も13年8月末。衆院解散さえなければ3年間、大きな国政選挙なしに政権運営できる環境が整う。9月に民主党代表選が予定され、「小沢外し」に反発する動きもくすぶるが、参院選に勝利した菅首相を引きずりおろすのは困難とみられる。
安定した政権基盤を手に入れた菅首相は、消費税引き上げも視野に財政再建や年金制度改革に取り組むことになる。
◆ケース2 与党過半数
◇連立組み替え論も
民主党だけでは過半数に届かず、国民新党も加えた与党で過半数を確保した場合、現在の「民・国」連立政権が続く可能性が高い。与党の非改選議席は国民新党の3と新党日本の1を加えた66。新党日本は現時点で候補を擁立しておらず、民主、国民新両党で56議席を獲得すれば与党過半数となる。
ただ、国民新党の亀井静香代表は積極財政論者で知られ、財政規律を重視する菅首相−仙谷由人官房長官との路線の違いが参院選後の政権運営に影を落とす。亀井氏は16日の記者会見で「菅首相と方向が逆だとは思っていない」と強調、「連立を組む党として当然、財政経済政策がこうあるべきだという意見は言っていく」と述べた。
郵政改革を巡っても、ゆうちょ銀行の預け入れ限度額引き上げ方針に仙谷氏が抵抗した。国民新党は外国人への地方選挙権付与や選択的夫婦別姓導入に反対しており、国民新党が政府・民主党を振り回す構図になれば、「連立組み替え」論が浮上する可能性もある。
一方、自民党の谷垣禎一総裁は参院選の勝敗ラインについて「与党の過半数をつぶすのが野党の基本的使命」と発言。与党過半数を阻止できなければ、辞任は必至とみられる。政権を安定させたい民主党から切り崩しを受けることも予想され、自民党は結党以来の危機に直面しかねない。
◆ケース3 与党過半数割れ
◇カギ握る「第三極」
与党を過半数割れさせ「ねじれ国会」を再現させる−−。これが野党の共通目標だ。
自民党は福田、麻生政権でねじれ国会に苦しんだが、当時、公明党と合わせて3分の2以上の議席を持っていた衆院で法案を再可決できた。民主、国民新両党は衆院で3分の2に届かず、参院で否決された法案は廃案となる可能性が高い。自民党にとっては、ねじれ国会で政府・与党を立ち往生させ、衆院解散に追い込むのが最短の政権復帰シナリオだ。
そのためには野党全体で66議席以上が必要だが、2大政党のどちらでもない「第三極」の一部が民主党との連携に動けば、自民党のシナリオは崩れる。社民党は民主党と選挙協力を続ける構えで、閣外協力や政策ごとの部分連合も想定される。
自民党の谷垣総裁はいったん40議席台を目標に掲げ、党内から「低すぎる」と批判されて軌道修正。自民党の石破茂政調会長は16日の記者会見で「改選第1党を当然目指すべきだ」と述べ、改選議席の獲得数で民主党を上回らなければ執行部の求心力を維持できないとの認識を強調した。
菅首相が民主党の勝敗ラインとして04年参院選の獲得議席50や改選議席54に言及するのは、自民党の切り崩しや第三極との連立組み替えによって政権を維持できるとの思惑からだ。しかし、参院選に生き残りをかける第三極勢力は民主党批判票の取り込みに懸命だ。
公明党の山口那津男代表は「単なる数合わせで協力することは考えていない」と連立参加に否定的な姿勢を崩さない。
みんなの党の渡辺喜美代表も16日、記者団に「参院のキャスチングボート勢力になり、民主党が出す悪法を次から次へとけ飛ばす」と強調。駆け引きが始まっている。
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